鼠力機関

鼠くらいの精一杯の力でもろもろぶん回せたらいいのにねえ。

彼我の愚か

[垂れ流し]

不幸自慢する人間はクソだ。
自分をよく見せるために不幸を道具にするやつはとってもダメだ。


人には人の来し方行く末都合パターンがあるので、
一概に「自分はこうなのに/こうだったのに何で同じようにできないの」なんて責めかたをするのはとてつもなく傲慢だし許されないことだと思っている、しかしそれを承知の上で書いてしまう。
共感を求められたけれど、私はそれを理解できても同意したり慰めたりすることはかなわないと強く思ったせいだ。
だからこれは、単なる愚痴。


職場のお局が女の業の佃煮みたいな人で、けっこう甘くて実にしょっぱい。
嫉妬陰口貶めで辞めさせた子は数知れず、人と感覚がずれてる故にいまいち話がかみ合わないし自分では気がついてない、仕事は出来ないからとりあえず残業して誰もいなくなったらてっぺんまで寝て稼ぐ、通販で買った化粧品を職場に届けさせる、とどのつまりに職場のこっぱげと不倫して毎日仲良くおひるごはん、などとまあ杜撰極まりない。

休憩時、この人とお茶を飲むと、血液型の話か、彼女の生きてきた道の自慢が始まる。
大概は頭に入る前に耳からはたき落とすのだが、
今回は新人が来てたんで、お局はとってもヒートアップ。かなり深いところまでお話しになった。
だもんで、彼女の執着の一端を垣間見ることができた。


幼少時の両親の不和、不倫、離婚。周囲の視線の変化。
不埒な親のせいで厳しくしつけられたこと。それにより夫と付き合うまで異性と交流がなかったこと。
夫は付き合い始めから手さえつながず、子を産んでからもいっこうにやさしくならず、
がために親族との関係もぎくしゃくしたこと。
離婚するために職場に来たが、職場の人とは折り合いが悪い。衝突をしても社長は見て見ぬ振り。
だから職場での頼りはこっぱげだけ。彼だけがわたしを見ていてくれる。


総括すれば、お局は「守ってもらいたい」とばかり言っていた。
わたしはこんなにかわいそうなのに、こんなに酷い目に遭ってきたのに、
どうして周りの人は誰も助けてくれないの?


ばーーーーーーーーーーーーーっかじゃねえの???????????


なんで「守ってもらう」ことをベースにしているのか。
女性なのに、と彼女は主張するのだが、だからどうしたって話だ。それはあんたの生き方だ、共感を求められても困るんだよ。
大体お前さ、同意したらうれしがって○○さんはわたしの味方なのねとか言っちゃってまぁた同じ話すんだろ? だったら今すぐ叩きつぶしてやろうか? とさえ思った。


人には人の来し方がある。
だからお局の今までは「彼女にとって」悲劇的だったかもしれない、しかし誰もがそう思うとは限らない。
人様はもっとその人なりの甘い道や辛い道を歩んでいる。その人なりの限界がある。
この女はそこをご理解の上で話しているだろうか? 否。
彼女は威張り散らしたい甘やかされたい食い散らしたい、誰彼かまわず認めてほしい守ってほしい。年齢と鈍重さを手に入れて、それをほしいままにすることが今では出来るのだ。考えてなぞいない。


そしてこんな性根の腐った女とは普通どなたも仲良くするわけありませんので、
そりゃ彼女のいうとおりだ、文字通り職場の他の女性から総スカン食うし衝突も起きるよね、仕事の要領も悪いしさ。
そしてそのとき、社長は「守ってくれなかった」しこっぱげは「守ってくれた」、
だからお局はよりどころ足りうるこっぱげと不倫した。クチャラーで加齢臭がきつくて頭もセンスも最悪のこっぱげだけど、自分に優しくしてくれたからだ。


誰にだって甘えはある、限界はある。
その人の積んできたものどもの照り返しがあるからこその今になっている。
人は人だよ、人様だ。道具じゃない。欲求を満たす概念じゃない。
もっぺんいうけどばっかじゃねえの。


ここで不幸自慢対決とかいう限りなく無駄なことをして、私はお局を叩きつぶしたって良い。
お局の物差しでいうならば、彼女がもはやなにひとつ自慢できずに悔しくて陰口を一生懸命叩くだけの機械になるくらいの経験を私はしたよ。彼女の半分くらいの年でな。
だって私には「守ってもらう」なんて発想、根本から無かったのだから。
(ついでにいえばここらへんとかここのあたりで、私がいかにバイタリティないかとか誰かにすがることやら他者に自分の価値を求めることをしないかなんてのを書いてたな。)


でもそんな経験、よその人と比べるのはあまりに愚かしい、そもそも比べるのが間違いだ。
彼女には彼女の。私には私の。その人なりの来し方がある。
それらはすべて平らに取り扱われるべきもので、せいぜい笑い話くらいにしかならないんだよ。


否定する気は無い。でもそれ以上に、肯定する気も無い。
私は。私は、自分を守るために、自分の言葉で考える。何も他人に仮託したかない。それが私の甘え。


自分の規範に無いものを理解させてもらったので、私はいつもどおり、目を伏せて何も言わずに茶を飲みました。