鼠力機関

鼠くらいの精一杯の力でもろもろぶん回せたらいいのにねえ。

よそはよそ、うちはうち、いなかもの。

先日、ある観光地に行った。
卒業旅行というヤツである。

20歳を過ぎた馬鹿どもが10人弱連れ立って行くのだから、当然集団行動ができるわけもない。
宿は同じところにとって夜は酒盛り。
日中はおのおの行きたいところを決め、
近い者は連れ立って、
決まらないヤツは決まったヤツの糞となって、1日を過ごすのだ。

おそらくはもうほとんど相見えることのない連中だろうから、大事に時間を過ごそう。
などと思っていた自分が馬鹿であった。
もう、一緒に過ごせないな、と、はっきり思うようなことがあった。

自分にとって、観光地に赴く、というのは、
「普段自分の住まう土地ではできないことをし、食えないものを食う」
というのが大前提なのだけれど、
よそさまのうちではそうじゃないらしい。




それが決定的だったのは最終日。

以前から、
仲良くはしているけれど、自分とはだいぶ違う価値観だなぁ、と思っている人と、その日は行動していた。

じつはこの時点で、この観光地の料理を食っていなかったので、
せめて最後のメシくらい、この土地の酒と料理を楽しもうじゃないか。
と、私は友人に提案した。


すると友人は、

ごめん、あっさりしたものが食いたい。
近くにモスとロッテリアがあるから、そこに行こう。

と、のたまったのである。

こいつは何を言っているんだ……?

ハンバーガーとかポテトとかあっさりしてたっけ。
ていうかえ? 何? なんでそんなどこでも食えるもん食いたいのここどこ?

さすがにそれでは味気ない、と反対したところ、
友人はガイドブックを取り出し、今から店を探す。と言った。
そして私はそのまま30分待たされた。

ようやく顔をあげた友人はニコニコして、
サラダの店に行こう。おいしいサラダとお肉が食べられるよ。
と得意げにいう。

唖然とした。したけれど、そのまま帰らなかったのは腹が減りすぎていたため。
連れて行かれた店のそばにあった、小汚い居酒屋に入らなかったのは返す返すも悔しいことだ。
とりあえず、ご満悦の友人を前に、私はわけわかんないカフェ飯?を食らった。



自分がいいかげん変態で、ものすごく性格が悪くて、常識はずれで、社会性がなくて、足も臭くて、
でもそんな自分に付き合ってくれる友人は非常に良い人だ、ということがわかった上でやっぱりいいたいけど、やっぱどうしても相容れない。価値観の違うことを魅力に思えない。
相手は悪くない。いつものことだ、私がずれているんだろうよ。

ただそれでも、その土地を満喫できなかった。という思いばかりが残る。


田舎者、とは、
よその土地に来て価値観を変えない馬鹿者のことだ、といったのは……景山民夫だったっけ。
一応の江戸っ子である自分として、この言葉はけっこう残ってるんだけど。

自分の価値観を変えず、集団行動ができず、観光地が満喫できないと吠えたける私こそ田舎者なのか、
それとも、自分の生活のスタイルを変えずにファストフードとかカフェ飯になだれ込む方が田舎者なのか。

私、ほんとはもっと市場で買い物をしたかったし、きてれつなものを食いたかった。
でもきっと友人は、お洒落な雰囲気にひたりたかったんだろう。
ごめんね。

ちなみに他のメンツは映画観てゲーセン行って王将とかっぱ寿司行ったらしい。難儀なことである。